魂に訴えかけるような内に秘められた思いが伝わってくる〜アラウ&ジュリーニ ブラームス・ピアノ協奏曲1番

通販レコードのご案内アラウとジュリーアーニのアプローチは、とてもロマンチックです。

 ピアノ付きの交響曲とも称されるブラームスのピアノ協奏曲は2曲あり、かなり難解なテクニックが要求される。本盤の第1番は、ブラームスの初期の代表的作品の一つで、最初に作曲された協奏曲に結実したが、ブラームスは最初からピアノ協奏曲を書こうとしたわけではなく、紆余曲折を経て完成している。『2台のピアノのためのソナタ』として書き上げられたものが原型で、ブラームスの常で、作曲した作品をクララ・シューマンに弾いてもらっている。ブラームスは何度かクララと試奏して、ピアノという形に不満を抱きはじめる。やがて、1854年の7月には交響曲に書き直そうと考えてオーケストレーションに取りかかったが、この作業にも行き詰まってしまう。
 だが1855年2月に協奏曲にしたらとひらめいたことで現在のスタイルの外形が出来上がった。ただしこの時点では、第2楽章は現在のアダージョ楽章とは違うスケルツォ楽章だった。さらに、クララ・シューマンや親友のヨーゼフ・ヨアヒムの助言を受け、彼らが納得いくまでブラームスは改訂を加えている。クララによれば第1楽章は1856年10月1日に完成、そしてブラームスの私信によればフィナーレは12月、そして第2楽章は新たに書いて1857年1月に完成している。ブラームスはクララへの手紙の中で、この楽章を新たに書き起こしたことについて「あなたの穏やかな肖像画を描きたいと思って書いた」と述べている。曲中にラテン語で祈祷文の一節『ベネディクトゥス』が引用されており、これはシューマンの死後の平安を祈ったものとも、夫を喪ったクララ・シューマンの悲しみを慰めようとしたものとも伝えられる。
 また、初演当時まだ25歳という若さもあってか、冒険的な要素も多い。後年のピアノ協奏曲第2番に比べれば、ピアニストの腕を見せる技巧的なパッセージも少なくない。レパートリーにしているピアニストも多いが、ブラームス自身がかなり卓越したピアニストであったため、第1楽章の『ブラームスのトリル』と呼ばれる、右手の親指と薬指でオクターヴ、小指で一つ上の音を続けて演奏するトリルが特に、技術的には難しい部類に入る。オーケストラ・パートについては、ブラームスの楽器の好み、とりわけホルンやティンパニへの興味が早くも現われているが、どちらのパートも演奏が難しいために悪名高い。レパートリーの多いカラヤンでさえ録音を残していないほどで、カール・ベームのバックハウスとのデッカ録音、ポリーニとのドイツ・グラモフォンには太刀打ち出来ない。
 オーケストラ・パートが非常に充実したシンフォニックな書法で作曲されているために、ここではジュリーニ、フィルハーモニアの強力なサポートが、アラウのソロを引き立てながらも鮮烈なオーケストレーションを主張していて、ロマン派を代表するピアノ協奏曲としての華麗さと風格を備えている。フィルハーモニア管弦楽団はジュリーニ自身高く評価していたオーケストラだっただけに、彼らの品の良い知性的な機動力が充分に発揮されている。ブラームスのリリシズムを活かし、一方で弦楽部とブラス・セクションのバランスを巧みに采配してオーケストラに独自の精彩を与え、輝かしくスペクタクルな効果を引き出している。テンポは通常より少し遅めですが、それはアラウの素晴らしいフレージングの美しさを浮かび上がらせ、またスコアの力と感情に訴えるインパクトが聞き手の魂に伝わります。これは、魂に訴えかけるような内に秘められた思いが伝わってくる演奏です。第2番冒頭のホルンの導入にも聴かれるように鷹揚なテンポ設定の中にも弛緩のない精神的な高揚を伴った演奏が、音楽に身を委ねることへの幸福感をもたらしてくれる。
 アラウ自身もまた稀代のヴィルトゥオーゾとしてリストの作品の演奏でも名を馳せたが、むしろ超絶技巧に聴き手の注意が逸らされることを回避できた数少ないピアニストだった。曖昧なタッチや衝撃的な打鍵は注意深く避け楽器を完全に響かせる術を熟知していて、ひたすら明確な響きによるダイナミズムで音楽性を表現する奏法は、ピアノという楽器が持っている機能や特性を知り尽くしていたからこそで、彼の哲学がここにかなっていたと言っても良いだろう。アラウのブラームスにはあざとさやスリリングな要素がない代わりに、常に正面切った雄弁な語り口と正々堂々たる構成力で聴かせる本来の意味でのロマンティシズムが横溢している。それだけの確固とした解釈の裏付けと表現力に支えられた、まさに巨匠と呼ぶに相応しいピアニストと指揮者が知性的な機動力を備えていたオーケストラとの至福のブラームスを聴かせてくれる共演盤だ。

1962年4月ロンドン、アビーロード・スタジオ録音

通販レコード詳細・コンディション、価格

プロダクト

レコード番号
SAX2387
作曲家
ヨハネス・ブラームス
演奏者
クラウディオ・アラウ
オーケストラ
フィルハーモニア管弦楽団
指揮者
カルロ・マリア・ジュリーニ
録音種別
STEREO

販売レコードのカバー、レーベル写真

GB COL SAX2387 アラウ&ジュリーニ ブラームス…
GB COL SAX2387 アラウ&ジュリーニ ブラームス…
BLUE&SILVER, STEREO 1枚組 (150g).

コンディション

ジャケット状態
M-
レコード状態
EX-
製盤国
GB(イギリス)盤


通販レコード

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  • オーダー番号34-20389
  • 販売価格44,000円(税込)
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  • 1962年ステレオ録音。まだまだ元気で骨っぽく力強い演奏を聴かせていた頃のアラウのピアノを、ジュリーニがへヴィーなカンタービレで重厚にサポートする稀有な名演。ブラームスのピアノ協奏曲はこうでなくてはと思わせる目の詰んだオーケストラ・サウンドが絶妙なフレージングで歌いこまれるさまは、まさに圧巻と言うほかないもので、完全主義者ジュリーニの面目躍如といったところです。


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