第283回 蓄音器でレコードを楽しむコンサートのご案内 – 2011/11/27

大器晩成型に属する大作曲家フランクが、1886年64歳の円熟期に完成した作品で、ベートーヴェン以後のヴァイオリン・ソナタとしては最高傑作と評されています。敬虔は情熱に漲り、優美で壮大で叡智の若々しさがあり、内省的な生命力に溢れた作品です。演奏は、ティボーの気品ある高雅さ、コルトーの豊かな色彩と情熱、両者の融合した名盤で聴きましょう。

後半、第2部は「持ち寄りコンサート」。来場者の持ち込みも歓迎、会員に限らず皆様がお持ちいただいた盤を優先してお掛けした後に、運営委員が持参したものを掛けます。
どんなものが出るかたのしみですね。

第1部 クラシック
フランク作曲 ヴァイオリン奏鳴曲(ソナタ)イ長調
演奏は、ジャック・ティボー(ヴァイオリン)、アルフレッド・コルトー(ピアノ)
録音は、1929年5月録音。

9月の例会では、フォーレの《ヴァイオリン・ソナタ 第1番》をヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)、エマニュエル・ベイ(ピアノ)のSP盤を初めて取り上げられた。ティボー(ヴァイオリン)、コルトー(ピアノ)にも1927年4月のSP録音があるが評判は芳しくない。フランスのヴァイオリン・ソナタという事も親しみの無いものだから、致し方ないことかもしれない。当会でも同様である。
テレビの時代劇では、フォーレの《シチリアーノ》や《夢のあとに》と言ったチェロの独奏曲は叙情的な場面に使われることは少なくない。現在熊本の地上波、TKU熊本放送で昼2時35分から再放送している『剣客商売』でも、茶屋女の艶やかな表情とけだるい体臭を感じさせるように使用されていました。フジテレビ系の時代劇では好まれているのか、伝統なのか、『鬼平犯科帳』などでも耳に出来る。時代劇のちょっとしたムードの演出には良く馴染んでいる。

ティボーは気品のあるヴァイオリン演奏をする奏者で、現代に存在していれば。と、思いを巡らされる存在。ティボー、コルトーにカザルスのトリオとしての録音は名盤ばかりで今もって愛聴されているわけですが、カザルスのチェロは力強い。チェロの音域が人の優しい語りかけに似ていること、SP盤、LP盤と言ったアナログ盤は再生を重ねていると低音域からの崩れが早く、そのために高音域がささくれ立った印象に転じます。低音域を小さくして高音域を強調して録音することの無かったSP盤だから、復刻LPで聴いた人には『ティボーのヴァイオリンは線が細く、なよなよした感じ』、『クライスラーの、あの両手を差し伸べて暖かく抱擁してくれるような演奏に比べて、ティボーの電気録音は、貴族的とか、フランスのエスプリとかいろいろ言われているが、なんか愛想のない感じがして好きになれなかった。それに、フレーズの端々に、微かに感じられるスタイリッシュなディフォルメ、これを粋と感ずるか、ケッ、気取りやがって、と捉えるかで好き嫌いは分かれるのであろう。』と言うのが共通した感想だろう。高貴さはこの節回しに感じるのだけど、スポーティな最近のヴァイオリン奏者の演奏とは違う。『大きな弧を描くようなポルタメント、ゆったりとたゆたうリズムに驚いた。』とは、好ましくないと感じた人がSP盤で聴いてイメージが変わった驚きだ。カザルスのチェロにマスキングされることも避けられるので、ティボーとコルトーの組み合わせが良いことが楽しめるだろう。

フランクのヴァイオリン・ソナタは、現代物の男女の艶めかしい愛のシーンを演出していることも多い。

アマデウスレコード☃ブログ組曲第4番: 第283回 蓄音器でレコードを楽しむコンサートのご案内 - 2011/11/27 via amadeusrecord.com