優美さと〝粋〟の極意 ― 耳をくすぐるような魅惑的な演奏
ジャック・ティボーの寵愛も受けたミシェル・オークレールは1951年のアメリカ・ツアー、1958年にはソ連のツアーなどで成功を収めたのを頂点に世界中から引っ張りだこになりましたが、早々に寿引退してしまいます。なんとも潔いことだろう。その頃の録音は随分と力のこもった ― 楚々としたしなやかさの中に、得も言われぬ風情と香気を感じさせる、フランスの精髄を体現すると評された師ティボーの芸風にも通じるところから ― 『女ティボー』と言われた通りの凄演だった。
入手しやすいのはフィリップス傘下のフォンタナ・レーベルに録音した一連のヴァイオリン協奏曲集で『モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番と第5番』はよく聴かれているが、ここでのアピールに『女ティボー』と言われた云々はそぐわない。彼女の音楽の変化を聴いていないような評価は、しいてはティボーの音楽の誤解を誘引しやすい事態を招いている。彼女の経歴を一見するだけで、それは覗える。
通販レコードのご案内《米ブルーラベル Masterseal 盤》US MASTERSEAL MSLP5002 ミシェル・オークレール クルト・ヴェス ウィーン交響楽団(オーストリア交響楽団) チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
1945年ロン・ティボーコンクール、ぶっちぎりの優勝かつ大賞を、弱冠20歳そこそこで獲得したことから、ジャック・ティボーの後継者と呼ばれている天才少女ミシェル・オークレール。30歳前後で引退したと云うから、残された録音は少ないと推察。本盤もその残された貴重な記録の一枚。流れもスムーズでウィットに富んでおり、フランスの粋を味わえる演奏となっていた。フランスに憧れていたチャイコフスキーも納得するのでは・・・。しかしフランス風のセンスだけでなく、ティボー譲りの魂の叫びが直接聞こえてくる。ヴァイオリンは時に悲鳴を上げるほど激しく泣き叫ぶ。
『女ティボー』を引き合いに出せるのは、レミントン盤だ。
ミシェル・オークレール (Michèle Auclair, 1924-2005) は、パリ音楽院でジュール・ブシューリの薫陶を受けたフランスのヴァイオリニスト。1924年の生まれ、1943年のロン=ティボー国際音楽コンクールのヴァイオリン部門の覇者である。ジャック・ティボーの寵愛も受け、ティボーの推薦でロシア人ヴァイオリン教師のボリス・カメンスキーにロシア流のテクニックを教わります。また1949年にはアメリカに留学してドイツ出身の名教師だったテオドール&アリス・バシュカス夫妻のレッスンも受けていました。
フランス、ロシア、アメリカの流儀を身に着けていったオークレールはコンクール歴も業績として上手く活用できたヴァイオリニストでした。1943年にロン=ティボー音楽コンクールで第1位を獲得した時には、記念レコードとしてティボーの指揮でヨーゼフ・ハイドンのヴァイオリン協奏曲ハ長調を録音。その後1945年のジュネーヴ国際音楽コンクールで第1位を獲り、まずはフランスを代表する新進気鋭のヴァイオリニストとしての名声を確実なものにしています。このジュネーヴ国際音楽コンクールは審査員の裁定如何では第一位を平気で空席にしてしまうコンクールだけにオークレールの優勝はヨーロッパ楽壇に、その名を轟かせるに十分なものでした。
演奏家としての現役時代に J.S. バッハから同時代の作品まで幅広くこなしていたオークレールは、そこそこの数の録音を残していますが、左手の故障を理由に演奏活動を停止してしまいます。1960年代半ばに作曲家のアントワーヌ・デュアメルと結婚したのが理由ですが、その清さ。彼女の活躍はヨーロッパ楽壇にその名を轟かせるに十分なものではありましたが、美貌や話題性での出逢いではなく自己表現の音楽として彼女の内包するものを受け入れた作曲家のアントワーヌ・デュアメルとの結婚を得て、それまでのジャック・ティボーからその才能を愛でられ一部のファンから呼ばれた「女ティボー」の渾名は必要なくなったのだ。
演奏活動から身を引いた後は母校であるパリ音楽院の教授に収まり、世界各国に出かけて教育活動に専念していました。1977年には来日してマスター・クラスを開いています。亡くなったのは2005年と最近のことです。
この『チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲』は、世界を股にかけて人気ヴァイオリニストとしての名声を謳歌していた頃、アメリカのレミントン・レーベルに録音したもの。討ち死に覚悟でオーケストラに挑むような気迫が漲っています。思わず情緒的に走ってしまうのが女流奏者の予想できないところで気の許せないところですが、レコードで聴くことが出来ないので想像するしか無いですが普段のオークレールの演奏は演奏活動から手を引くほんの少し前の録音での、ロベルト・ヴァーグナー指揮するインスブルック交響楽団との演奏に聴くような堅牢な耳をくすぐるような魅惑的な、力の抜き加減を計算したものではなかったか。2009年公開のフランス映画『オーケストラ!』(原題: Le Concert)を思わせる光景が本盤で遭遇できる。
昔から名盤の誉れ高い盤で70年代には廉価盤で出ていたが、それでもLP初期盤などはプレミア価格必須の盤。
通販レコード詳細・コンディション、価格
レミントンがオリジナルとなる、オークレールの有名な録音。(これがメジャーデビュー盤か?)未だ20歳代のオークレールの漲る気迫と甘美な音色が見事に捉えられた優秀録音盤。2面にやや歪みが感じられるのが減点となるため、格安でご提供します。
プロダクト
- 品番
- 34-27447
- レコード番号
- MSLP5002
- 作曲家
- ピョートル・チャイコフスキー
- 演奏者
- ミシェル・オークレール
- オーケストラ
- ウィーン交響楽団(オーストリア交響楽団)
- 指揮者
- クルト・ヴェス
- 録音種別
- MONO
コンディション
- ジャケット状態
- EX-
- レコード状態
- EX
- 製盤国
- US(アメリカ合衆国)盤
通販レコード
品番 | 34-27447 |
販売価格 | ¥5,500(税込) |
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